二人目の妊娠がわかったとき、僕は育休ではなく在宅勤務を選ぶことにした。
なぜ「育休」ではなく「在宅勤務」を選んだか
一人目のとき、2ヶ月の育休を取った。あれは本当に良い経験だった。でも二人目のとき、同じことはできなかった。
任されている仕事の量も、責任も、一人目のときより明らかに増えていた。長期間離れることは、どう考えても現実的ではなかった。
そこで出てきたのが「在宅勤務」という選択肢だった。
コロナ禍に一時的にリモートワークをやっていた実績がある。IT系の業務が中心で 、場所を選ばずできる仕事が多い。育休は取れなくても、在宅勤務なら仕事を続けながら育児も支えられる。
思い切って提案してみることにした。
交渉のタイミングと伝え方
妻の妊娠が安定期に入った段階で、すぐに動いた。
上司と社長に、口頭で直接伝えた。資料は作らなかった。「在宅勤務をやらせてほしい」と率直に話した。
反応は予想以上に早かった。「良い方向で考える」という返事がすぐに来た。
会長も「すんなりOK」だった理由
一人目の育休のとき、会長は少し怪訝な顔をしていた。でも今回は違った。会長も社長も上司も、全員すんなりOKしてくれた。
上司はこう言ってくれた。「これからはこういう働き方が大事で、この会社の働き方が変わる大きなきっかけになる」と。
前回の育休で積み上げた信頼があったこと、IT部門として会社内でそれなりに実績があったこと——その積み重ねが、今回の交渉を後押ししてくれた。
交渉で「効いた」一言
承認を得るうえで、もう一つ工夫した点がある。
僕の部署はIT系で、社員のPCをリモートで管理・メンテナンスする業務がある。社員が帰宅した定時後の方が、むしろPC作業をしやすい。
「在宅勤務にすることで、定時後にも対応できる業務の幅が広がります」
感情論だけでなく、会社にとってのメリットとして伝えたことが、スムーズな承認につながったと思っている。もちろん物理的に出社が必要な業務もあるため、週1回の出社は続けることになった。
在宅勤務スタート——出産前日から始まった地獄
在宅勤務が始まったのは、妻の出産前日だった。
妻が入院してから退院するまでの約1週間、僕は上の子(当時2歳)と二人きりで自宅にいた。もちろん仕事もある。
おむつ替えをしながらメールを返す。ご飯を食べさせながらSlackを確認する。お昼寝の隙間に集中して作業する。妻と下の子に会いに病院へ行く日は、その分の仕事を夜に取り返す。
定時で終わることはほぼなかった。日付を越えるのが当たり前になった。
家族全員が揃ってから、さらに激化した
妻と二人目が退院してからも、状況は変わらなかった。むしろ悪化した。
夜中の授乳と夜泣きで寝不足が続く。下の子が少し落ち着いたと思ったら、今度は上の子が本格的なイヤイヤ期に突入した。昼間は上の子と下の子、それぞれに一人ずつ付いていないといけない状況が続いた。
仕事は日付を越えることが常態化した。常に寝不足だった。
それでも、手は抜かなかった。
在宅勤務のせいで業務が滞ると思われたくなかった。社員からの問い合わせには即レスを徹底した。やるべきことは必ずやり切った。
「1年の約束」がそのまま続いた理由
当初、在宅勤務は1年という約束だった。
でも今も続いている。
上司から、こんな言葉をもらった。「最初は子育てのための在宅勤務だったけど、これからは業務がしやすいから在宅を選んでいる、と会社に言えるようにしよう」と。
在宅勤務を権利として使うのではなく、成果で示し続けたことが、この言葉につながったと思っている。
在宅勤務を交渉したい人へ
交渉を成功させるポイントを3つまとめる。
① タイミングは早めに、口頭で直接
書面やメールより、直接話す方が誠意が伝わりやすい。安定期など「節目」のタイミングで動くと自然だ。
② 感情論より「会社にとってのメリット」を伝える
「育児があるから」だけでなく、「在宅の方が〇〇という業務がやりやすくなる」という視点を加えると、上司も説明しやすくなる。
③ 成果で信頼を積み上げ続ける
交渉が通ったあとが本番だ。在宅でも手を抜かないことが、次の交渉の土台になる。
上の子のイヤイヤ期もようやく落ち着き、下の子の夜泣きもほぼなくなった今、在宅勤務を選んで本当に良かったと感じている。
仕事も育児も、どちらも中途半端にはしたくない。その欲張りな選択を、会社が認めてくれたことに、今も感謝している。
